学び続け訪問に取り組む保健師

2月の親子ヘルサポキックオフ講演を担当した精神科医の鷲山です。2月のキックオフも6月の中板理事の講演会も数百人の保健師が参加され、うれしい限りです。9月はいよいよ、小林美智子先生の講演会です。ぜひとも一人でも多くの保健師に参加してほしい内容です。会員の皆さんが、新人や若手の保健師を誘って参加してくださることを期待します。私は20年来、母子保健の虐待予防活動の研修講義や学習会、事例検討会をライフワークにしてきました。一昨年は行政主催の研修会の多くが中止になり、私が東京の下北沢で23年間毎月つづけてきた虐待臨床研究会も一時中止を余儀なくされました。一方で、オンラインで開催すると予測を超える多数の保健師がCOVID-19対策の多忙のなかで参加し、保健師の学習意欲の健在ぶりを頼もしく思ってきました。私が評議員をつとめる子どもの虐待防止センターのMCG(虐待ハイリスクの親支援グループ)講座では、さすがに集団療法は実際に集まって学ぶべきとスタッフを説得し感染対策を徹底して開催したのですが、一昨年も昨年も、主催者側の予測を上回るCOVID-19前に劣らない数の参加者が会場に来てくれました。“みんな学びに飢えているのだな”と感じます。

今年に入って、1年目や2年目の保健師の参加が増えてきたと感じています。7月、8月は第7波で保健師業務が大変になるなかで、下北沢の研究会にも、私の診療所で毎月行っている事例検討会にも、中堅やベテランの保健師が新人を積極的につれてきてくれました。新人保健師の学びの場も制約されてしまっているようです。どちらも訪問が話題になり、新人保健師は訪問の了解をとる難しさに悩んでいました。一昨年の春以来の「訪問していいですかと了解をとる」風潮はCOVID-19の影響なのですが、新人や2年目の保健師は入職した時点からそれが当たり前なのです。公衆衛生は申請主義ではない、ハイリスクの妊産婦ほど援助を求める能力が低下している、訪問を自ら希望しない事例ほど訪問の真のニーズは高い、という母子保健の基本を再確認し、先輩保健師が訪問を実現するための多彩なアプローチ方法や“また来てほしい”と思ってもらう技術を伝えると新人には目から鱗の体験で、さっそく明日から実践してみる、という大きな学びになりました。

遠方の自治体に私が新幹線や飛行機で研修講義に行く機会はめっきり減りました。お盆休み明けには大都市圏以外への感染が広がり、全国の保健師にとって学びの機会が限られてしまっているなかで、親子ヘルサポの活動を皆さんで大切に育てていきましょう。

鷲山拓男